コラム8.産業革命と生活水準論争 ＴＯＰ》メニューへ |
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いわゆる産業革命が労働者階級の生活水準の低下をもたらしてきたかどうかという、いわゆる生活 水準論争がかつて欧米でおこなわれた。そのなかで、悲観説と楽観説がとなえられた。 労働者階級の窮乏化を主張したのはマルクス、エンゲルスであり、またこの説とは若干異なるが トインビー、ハモンド夫妻、またウエッブ夫妻は、時代の質的変化とする、断層説、悲観説という別のの系列である。 これに対して、変化を、連続説、楽観説によって見るという見解がクラパム、ネフ、アシュトンなどによって主張された。 後者の、この説はA.マーシャルの「自然は飛躍しない」とする連続説と、経済の進歩と調和という成長的歴史観 に基づくものである。そして初期の思想的立場からの分析から次第に近代経済学を長期化させた 巾の広い、数量経済史、経済成長的歴史観へと進み、アシュトンから、1960年代における、W.W.ロストウ の「経済成長の諸段階」＝非共産党宣言の離陸論（take-off）にまで至った。 マルクスの窮乏化法則にもかかわらず、イギリス労働者の生活水準は著しく改善されたことを楽観説の論者は、実質 賃金や家計簿の分析から明らかにした。 さて、産業革命が始まると、それまでの職人が仕事を奪われ、機械打ち壊し運動（ラダイト運動）運動をおこな う。もちろん、失業の根本的原因は機械の資本主義的充用にあるのであって、機械そのものにあるのではないこと を認識し始めるまでには数年かかった、と資本論では述べられております。 また、チャーチスト運動は普通選挙法や救貧法などのの議会改革、権利獲得のための運動であったとは言え、戦闘的な 労働運動でもあった。 確かに、エンゲルスの「イギリスにおける労働者階級の状態」を見るまでもなく、労働者の生活は悲惨なものだった。 しかし、イギリスは1850年代には七つの海を支配し、インドを植民地として、12世紀よりのアイルランドの犠牲と収奪、 アメリカへの大量移民の上でのイギリスの繁栄は築かれていった。 したがって、植民地収奪の上での、特別超過利潤の取得を得たイギリスは全体として潤い、労働者階級もその おこぼれに預かり、生活水準も相対的に良くなったと言えよう。チャーチスト運動も次第に鎮静化していった。 いわゆる「労働貴族化」のはしりである。 この意味では楽観論者の方にやや軍配があがるといえないこともない。 しかし、マルクスは、相対的剰余価値の生産のところで、産業革命による機械制大工業により、下部構造が封建的 生産様式から、資本制的生産様式に変化することが述べられている。以下にそのPositive（肯定的）な面、Negative （否定的）な面の両面からマルクス、エンゲルスの産業革命観、生活水準にたいする考えを明らかにしよう。 否定面から述べると、先に述べた機械の「社会的摩滅」＝改良あるいは新鋭機械の採用による、従来の機械による陳腐化 をこうむる。したがって、できるだけ早く、機械を使い尽くすため、労働時間の延長、交替制、深夜業を実施すると同時に、 労働の単純化による児童労働、婦人労働の包摂、資本の基への労働の形式的従属から実質的従属、そして資本の専制 支配が完成する。 また、手工業時代の牧歌的な生活を奪った、というようなこともあろう。 しかし、肯定面では生産力の発展、生産の社会化、工場制度、工場法によるによる「未来教育の萌芽」「封建的中世的、 家族制度の打破」「”全面的に発達した人間”を生み出すための予備条件の形成」等々、進歩的な側面も見られる。 と言ってもこれはあくまで、封建社会、中世の社会に比べての、あるいは未来の社会主義、共産主義に対して肯定面である。 この肯定面における把握は、産業革命も高度な生産力を発展させるものであり、この巨大な生産力と生産関係（資本家と 賃労働者）の矛盾の止揚である未来社会が社会主義、共産主義である。 従って、こうした唯物弁証法的把握では、一概に悲観説と決め付けるわけにはゆかない。ウエッブ夫妻のような博愛主義 者や、キリスト教的慈善事業者＝空想的社会主義者とも異なっているのである。 ただ、窮乏化法則は絶対的窮乏化論や相対的窮乏化論などもあり、賛否両論もあり、いろいろ意見の分かれるところである。 しかし、長い目で見た時、相対的には生活水準は上昇したがそれは労働者階級の階層化、及び産業循環（すなわち、好況期→ 恐慌期 →不況期）などにもよる。 また、中間層が現れたり、小生者が分解しないなどの現象も現れてきている。 ←前のページに戻る ▲このページの始めに戻る |
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コラム9. 効用価値説と労働価値説 |
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| 価値と言う言葉は経済学上ではなくても、一般的に用いられる。 たとえば、「創価学会」の創価と言う意味は価値を創るという意味である。 そうした、一般的な”価値”概念のなかにも〜する価値ががないとか、United States is untrustworthy. などと昨今の英字新聞などに書かれている。米国などはもう信頼に値しない と言う意味であろうか。 worthが、1.あるものと交換しても等しい価値がある 2．〜に値する、・・・・する価値がある とかいうのが worthの意味であろう。valueはこれよりややくだけた表現であろう。経済学ではこちらの方が使われ、worth というのは、精神的、道徳的なことをさしているのではないかと思われます。 経済学では古典派がこの言葉を使って、使用価値と交換価値とに分けたと考えられる。我々にとって最も身近なもの よいえば、商品の値段すなわち、価格である。その価格の背後に価値があるということもやはり古典派経済学やもっと 以前のアリストテレスなどが発見したと思われる。 価値の本源（源泉、本質、実体）をどこに見るかによって主観価値論（近代経済学の効用価値説）と 客観価値論 (マルクス経済学の労働価値説)にわかれる。後者、労働価値説についてはこのサイトの主題であるので、ここでは 両者の違いを明らかにするために、主観価値論＝効用学派の理論を簡単に紹介することにする。もちろん、私は この分野での専門家ではないので、あまり細かいことはのべられません。 限界効用学派は古典派経済学が捨て去った、使用価値価値から効用価値というものを導き出し、消費者の心理的欲望 の満足度による限界効用理論をうちたてた。このもとはゴッセンであると言われており、ジェボンズ、ワルラス、 メンガーなどによるものである。限界効用価値の可測性の不可から、関数による計測性から数理経済学になっている。 従って、価値論というのはすでになくなっている。例えば、砂漠を旅する旅人の一杯の水はおいしいが、二杯、三杯 となると、次第に満足度は逓減するというような「限界効用逓減の法則」などがある。 この点などはミクロの理論であるが、これらの批判は後日、別項をもうけて詳述したい。 これらに対して、マルクスの労働価値説は交換価値の方を重視するもので、もろもろの商品の使用価値には、人間労働 が加わったものであると考え、その使用価値の捨象ということを行い、抽象的人間労働の凝結物として商品の価値を 見るという考え方をとる。これは、資本論の解説のなかでさらに詳しくみていくことにしたい。 この使用価値の捨象や他の部分の労働価値に関することにたいして、効用学派のベーム・バベルクとヒルファデイング との論争ががある。又別のところで、宇野弘蔵が異議を唱えている。 ちなみに、近代経済学では元ロンドン大学教員の森嶋通夫が近経の立場から数理的に労働価値説を正しいものと認めたこと が、私の記憶と印象に残っている.。「マルクスの経済学」「価値.・搾取・成長」 ▲このページの始めに戻る |
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コラム．10 恐慌と不況 |
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| バブル経済が弾けて以後10数年になる。日本のみならず、世界的な、同時不況がおこっている。政府もしくは、ジャーナリズム、マスメデイアは、選挙の前になると、盛んに日本経済は回復しつつあり、不景気は底をついたということをなんども繰り返して言った。 もちろん、長い不況の間にはあるていどの波があることは当然のことである。 しかし、それはほとんど、微々たるものでしかなかった。今年度（2004年）になって、また景気が少し回復してきたともいわれている。 ところで、不況と恐慌とはもちろん、全く異なる。しかし、今度の10年にわたる不況は”大恐慌型不況”と呼ぶ経済学者もいるくらい深刻なものである。大恐慌といえば1929年、1930年の大恐慌を想起せざるをえない。この、大恐慌についてはここではのべることをしない。 そこで、ここでは、中期マルクスの恐慌観をのべることにしたい。 というのは、マルクスは、資本論においては恐慌については、明確な理論は書いていない。他の著作においても同じである。 しかし、諸著作、草稿などで、恐慌については多く触れている。マルクスは資本主義の矛盾を生産力と生産関係としてみており、恐慌と革命との関係を問題意識にあげていた。そして、恐慌には周期性、循環性があることを掴んだ。この時期が共産党宣言を発表した１８４８年のころである。そして、１８４７年の世界商業恐慌が１８４８年の２月と３月革命の本当の産みの親であることを悟る。「共産党宣言」では恐慌が資本主義の歴史的特殊性を持った、過剰生産恐慌であると判断した。 マルクスはこの１８４８年の革命の敗北後、イギリスに亡命。１８５０年の秋から経済学研究を再開し、７年の歳月をえて、１８５７年に最初の草稿「経済学批判要綱」＝１８５７年〜１８５８年草稿を書いた。すでに、１８４７年「哲学の貧困」をフランス語で書き、１８２５年から始まった恐慌には、最初は6年〜７年の周期があるとみていたが、固定資本(機械、工場)の更新が関係しているとの判断から、恐慌の周期が１０年であると見解に到達する。しかし、絶えざる技術革新によりこの期間は短縮される。また、（1825、37、47、57、66年の10年周期の恐慌は） それ以降になると生産の集積、集中により独占が生まれ、海外に商品の輸出から資本の輸出する帝国主義段階に至ります。1929年の大恐慌以降は、ケインズ政策により恐慌は多少とも鈍化するようになります。産業構造も自由主義段階の綿織物工業から、重化学工業等に変わって行き、もっと最近では情報、サービス産業等の比率が多くなってゆきますので、従来の10年周期説は変更せざるをえないと思います。といっても主としてイギリスに起こっていた恐慌はドイツアメリカ中心になってゆきます。それは周期的恐慌ではなく、大恐慌として爆発するのです。（2016.12.29追加） 資本論第二版の後書には次のように書かれている。 また、その恐慌がイギリスのみならず、世界市場恐慌として、世界市場を不断に拡張する傾向にあることをインドのセポイの乱、中国の太平天国の乱を例に、「経済学批判要綱」で「資本の文明化作用論」として述べた。 恐慌に対する理論にはさまざまな理論があり、に、拡大再生産表式の第一部門の優先による均衡、不比例による恐慌論である。、この部分については別の機会に譲るとします。また、利潤率の傾向的低下の法則を中心とした恐慌論であるが、この部分もまた、利潤率の傾向的低下の法則および、それに反対する作用、法則の内的矛盾などから恐慌論をみちびきだしている。 |
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コラム．11. 社会主義と商品生産 |
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資本論の商品論のなかに「商品の呪物性」あるいは、「物神性」というところがある。ここにおいて、物神生とは言い換えれば、呪物性のことであり、フェテイシズムとも言われる。よく性的な倒錯のことにも使われることばであるが、マルクスの場合は経済的なことに用いられ、商品→貨幣→資本というように、生産における人と人との関係が転倒されて、物と物との関係としてあらわれてくる ということである。中世の封建社会、資本主義社会、と対置して社会主義や共産主義社会においては、商品の物神性はなくなると結論づけている。もちろん、マルクスは直接に社会主義、共産主義という言葉をつかってはいない。 要するに、自由人の共同体＝社会主義、共産主義の社会と商品生産者の社会は両立しない、ということが述べられているのである。しかし、かつての社会主義社会と言われた、それに現在社会主義といわれている、中国、北朝鮮、キューバ、ベトナムなどには、商品生産はあるし、崩壊したソ連、東欧などにも商品生産はあったのである。1930年までの、学者、論者は、社会主義になれば 商品生産はなくなる、したがって、いわゆる「経済学」もなくなるという 経済学消滅論をとなえた。その一人がローザ・ルクセンブルグであり、著書「経済学入門」においてのべられている。そのほか、ブハーリンの著「転形期の経済学」などにおいても、商品生産と社会主義とは両立しないということが述べられている。 しかし、スターリン体制になって、「ソ連共産党の党学校の教科書の要綱」において社会主義と商品生産は両立する。非両立性をいうのは間違えであるということが述べられ、大問題となった。 この問題は現在の、中国などの市場経済の問題等と絡んできて、またソ連などは社会主義であったかどうかの試金石にもなるので、再度、もう少し細かく、検討し述べるか別項において詳述したい。 ▲このページの始めに戻る |
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