★コラム．資本論ではアットランダムに、資本論に関係するテーマについて、簡単にコメントしてゆきます。
ここでは簡単に、実際の資本論などに書いてあるとうりではなく、私のおもいつくままに書いて掲載してしまう
ことも多いので、間違いもあるし、必ずしも一般的考えでなく独断もありますので、なにとぞご勘弁のほど
よろしくお願いいたします。
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一労働日は英語のWorking Dayという言葉からとったものであり、働く日というような
意味ではなく、一日の労働時間という意味です。
当時、イギリスでは労働日を延長して労働者を使う、という法律と、労働日の短縮という
法律の設定が、合い半ば拮抗していた。
マルクスも指摘しているように、労働時間の短縮は労働者階級の長い階級闘争の結果として
制定されたということ、このことは、全くそのとおりであろう。
しかし、体制側すなわち、資本家階級＝社会的総資本＝国家の側の体制維持と言う観点
から工場立法が出来て、１０時間労働制など労働日の短縮など、労働者保護立法がでてきた
ということもみのがせない。
この点についての論争が日本において、戦前から戦後にかけて、社会政策本質
論争としておこなわれた。。その発端は戦前、社会政策の研究者である、大河内一男の書いた
「社会政策」と言う本であり、彼は、標準労働日の制定は、社会的総資本＝国家の側
の体制維持保全策をであるとする観点から、この事を捉えて、記述した。
これにたいして、こうした見方は、生産力視点からの捉えかたであり、階級闘争、階級
視点を欠いている”生産力主義”であるという批判が展開された。この筆頭が岸本英太郎、
服部英太郎などの人々である。しかし、大河内がそのように書いたののは、戦前であるから
表現の自由の制約もあり、やむおえず、体制の維持保全策という視点からしか書き得なかった
かもしれないし、その真意はわからない。体制側の維持保全という観点も見逃せないことは、
資本論での、一部の、先進的工場監督官レオナード・ホナーなどの引用をマルクスが積極的におこなっ
ていることなどからもわかるし、、また、工場立法も必ずしも、階級闘争の結果としてのみ制
定されたということではないかもしれない。
その後、、労働者の階級闘争と総資本の両者の絡み合いということも、主張された。が、それであっても
階級闘争の方に力点を置くべきで、しかし総資本の維持も無視できないと、現在の私は考えています。
といっても、大河内の「社会政策」と言う本は手にはいりやすいが、その批判は手に入りにくいなどの
事情もあり、ここでは詳述しない。
また、その判断は各国によっても異なるし、非常にむずかしい。
しかし、とりあえず、こうした論争があったことを捉えておくことは、資本論を理解するうえで
若干プラスになるであろう。
コラム.2生産様式について |
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| 「労働過程」のところで述べられている”労働が資本に従属することによって起きる生産様式・・・・”のところの ”生産様式”と言う言葉のは 協業、分業とマニュファクチュア、機械制大工業といった 生産方法のことでしょう。 ところで、マルクスは 生産様式＝produktiotionswise（独）とiいう言葉を狭義な意味と広義な意味とで使っており、使いわけ していないようです。 広義な意味とは、周知のように、生産力と生産関係による原始共産制、奴隷制、封建制、資本制、社会主義制という ような、あるいは「経済学批判の序言」にのべられているような、アジア的、古代的、封建的、近代ブルジョア的生産 様式というように使われているようです。 狭義な意味とは前述したような相対的剰余価値の生産のところでの協業、マニュファクチュア、機械制大工業のようなも のでこちらはむしろ生産方法とでも訳した方がわかりやすいかも知れません。 ▲このページのTOPへ |
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コラム.3土地の所有と占有 |
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| 封建社会における農民（農奴）は、土地を除いた生産手段を所有しており、土地に ついても占有権を保持し、領主に剰余労働を提供しなければならない “経済的必然性”はありませんでした。だからこそ剰余労働を提供させるには“強 制力”が必要だったわけです。 これについては、日本の江戸時代とイギリスなどヨーロッパではかなり封建領主と農 奴との関係が異なっていると考えられます。 資本論ではこれまで見てきた、労働力の売買、第一部の最後のところの見る本源的蓄積や第三部の地代論 のところ、47章資本主義的地代の生成などののところとも関係して くると思います。 この場合、農民（農奴）といっても、その封建社会の前期、中期、末期などによって もまた土地の所有、占有、保有関係はかわってきます。 また、農民層もさまざまに階層化があったと思います。 法的にも占有と所有とは意味合いがことなります。所有というのは絶対的支配権、使 用する権利、自由に処分する権利ですから 農奴にその権利があるわけではない。しかし、農機具などは所有していた。また農民 だけではなく、手工業者も生産手段は持っていたといって良い。 私見ですが、封建時代は領主といっても、常に争いをおこし、変転していった。そう したなかで、農奴も土地を完全に所有はしていなかったけれど（これは保有という言葉で表す） 農民も事実上、土地を所有に近い占有していた。もちろん、農民だけではなく都市の手工業者も 小規模な生産手段を所有していた。 そうしたものからの自由（free from～）=生産手段を持たない、生産手段から切り離さ れるというのが二重の意味で自由のうちの第二の自由 です。これは、囲いこみ（enclosure movement）などで、貨幣の資本への転化、原蓄のところででてきま す。第一の自由というのが、人格的自由です。 ところで、大塚史学や、市民社会派の人たちが強調するのは、いわゆる農奴ではな く、イギリスを中心に西ヨーロッパの封建制の末期に登場した 中産的生産者層（yeomanry）のことです。これは独立自営農民や、都市の独立手工業者 のことです。当然、独立自営農民は土地は所有していた。 大塚はこの両極分解から、資本家の生成を見、市民社会派（平田清明、望月清司）はこのヨー マンリーを市民としてとらえ、市民社会から資本家社会の 転変を資本諭の中軸にするのです。この市民はかつては実在したが19世紀の終わりには完全に いなくなってしまったというものです。 ▲このページのTOPへ |
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コラム．４ マルクスの労働観 |
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| マルクスの労働観＝労働というものの対する考え方を見ていく場合 初期マルクスと、資本論執筆の頃の後期マルクスの労働観の対比ということが まず考えられる。次に古典派の経済学、特にA.スミスの労働観、 又、近代経済学のそれとの対比も考えられる。 さらには、西欧社会に根ざしたユダヤ＝キリスト教にまでさかのぼって 労働観の流れの中で、マルクスの労働観を捉え直すと言う作業である。 しかし、ここでは前者の二点に渡って論述したい。 マルクスの労働観については資本論の中では第一部、一章、第２節、 労働の二重性の末尾の注.16 において、A.スミスの労働の支出の ネガテイーブな把握＝toil and trouble{煩労と労苦}＝休息や 自由や幸福の犠牲と考えている。（国富論） これに対しマルクスはポシティーブに「正常な生命活動である」と把握している。 また、労働過程のところでも、「労働そのものは、人間と自然との間 の一過程であり、人間自身の自然のうちに眠っている潜勢力を発現 させ、その諸力の営みを彼自身の統御に従わせる。」といたって 楽観的に述べている。人間の目的意識的活動を評価しているのである。 農業での収穫の喜びや仕事の達成の働き甲斐は例え、搾取があったとしても 全くないわけではない。しかし、労働は使われ、自分の働き分を強制的 持っていかれてしまったという搾取による労働、広い意味での、階級社会での 労働はやはり苦役であり、本来的なな人間の行うことではないと思われる。 初期のマルクスの著作「経済学哲学草稿」では 疎外された労働 ということ が強調される。人間の類的な本質が疎外されるということである。 マルクスはまた、労働に対して二つの考え方を持っていたと思われる。 第一は、労働の解放であり、第二は労働からの解放である。 前者は労働そのものが、搾取のなくなった社会には遊戯のようなものに なることである。空想的社会主義者の一人、フーリエの協同組合論や初期マルクス の著作「ドイツイデオロギー」の「朝に狩りをし、昼には魚をとり、 夕べには家畜を飼い、夕食の後には批判をする」と述べられてている社会。分業が廃棄 され、全体的発達した人間の営む共産主義社会の理想の姿である。 後者は「労働時間の短縮は解放の予備条件である」と述べていることに表され ている、自由時間の拡大である。自由時間のなかでの人間の多面的に活動をする という面である。 第一の考えは、高度に発達した共産主義の段階で初めておこなわれるものと考えられ 第二の考えは資本主義の枠内で、あるいは社会主義の低い段階でのものと考えられる が、両者が次第に合体してくるともいえよう。この点は未だ定かではない。 なお、近代経済学（新古典派）では労働をマイナスの効用（disutility） として、とらえ、所得をプラスの効用としてとらえ、労働供給曲線によって ▲このページのTOPへ 分析をしている。 |
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コラム.5.労働と労働力 |
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| 労働力と労働の区別（峻別）は初期マルクス、中期マルクス の「賃労働と資本」「経済学批判要綱」などにおいても マルクスさえ明確に区別していなかったと思われます。 まして、古典派経済学や俗流経済学においてはなおのこと 曖昧なものとしてしか捉えられていなかったと思います。 マルクスがようやく、資本論に至って、その峻別を完成させたといえます。 当初は労働能力という言葉を使っていました。 労働力というのは、文字どおり、人間の身体に宿っている、肉体的および 精神的能力という意味でしょう。 この労働力が商品として労働市場で売買される。ということを発見 したのも、後期マルクスです。それまでは”労働力”ではなく”労働”が 売られ、その対価もしくは代価として賃金が支払われるという 日常意識にもとずいた考えが一般的であった。この点についてはこのサイト の前書きの、自然科学と社会科学というところに述べておきました ので、ここでは省きます。また、資本論講座のところで詳しく述べます。 これは資本論第一部、労賃論「労働力の価値または価格」で展開されています。 マルクスみずから、人間の消化能力と消化に例えて語っているように 労働力というのは先ほど述べた人間の能力です。労働力という商品のの使用価値 の消費、使用、実現が同時に価値、剰余価値を生むというのが 労働力商品の一番重要な”特殊性”です。ということはまとめて 売れないとか、他にも、一般商品と区別するいろいろな”特殊性”はある わけです。 このうちの、労働力商品の使用価値の消費 がいわゆる労働です。 労働というよりも、労働している＝Ｌａｂｏｒingといった現実的動き、活動 と言ったほうがよいかもしれません。 さらに、剰余価値の源泉といった視点からは整理すると以下のようになります。 産業資本の定式 G－W（A,，Pm）・・・P・・W'ーG’を流通と生産の二段階 に分けて労働と労働力を説明してみましょう。 ①労働力＝労働能力＝商品＝価値の所有→自由に処分できる。→流通市場の部面 G－W（A，.Pm） 労働者が一時的に処分できる。 可能的転化 ②労働＝労働力の消費＝非商品＝価値を作る実体→自由に処分できない。→生産の部面 W（A，.Pm）・・・P・・W' 現実的的転化 古典派はこのように流通と生産とを区別できなかったと思います。 ▲このページのTOPへ |
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コラム.6．固定資本の無形の損耗（社会的摩滅） |
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| 固定資本（機械設備など）の摩滅には、1.それを使うことによる 摩滅＝価値移転 2.全く使わないことによる錆びなどによる 摩滅 3.道徳的（社会的、歴史的あるいは社会基準上の）＝摩滅 があります。 3.の摩滅はmoralishというドイツ語の訳ですが、これは英語の moralという言葉と同じように「道徳、あるいは形容詞の、道徳的な」 というような意味もありますが、「社会的な」という意味もあります。 道徳的摩滅はたしか長谷部文雄氏の訳で向坂訳では「無形の損耗」 になっております。社会的、無形の という訳のほうが 道徳的 と訳すより、わかりやすいと言えますがいま少し意味がはっきり しないようです。 これは、生産力の発展により、発明、発見をぬけがけ的な新しい 生産方法をとった企業で、特別剰余価値を得るのにたいして他の 企業では旧来の固定資本（機械）が陳腐化し、コストの安い商品 が作れないといった価格競争に敗れ、マイナスの特別剰余価値 しか得られないと言う意味です。 マルクスの時代には固定資本の耐用年数が10年で、それが恐慌 の原因のひとつになったとマルクスは考えました。 現在のパソコン関連の商品などは、その陳腐化が早く、競争が他 の産業の機械、固定資本より、いわゆる”社会的摩滅＝無形の損耗” は急速であるといえましょう。パソコンや家電のような消費財にお いてもこのようなことがおこります。 なお、このmoralishという言葉ですが、労働力の価値規定での、 単に衣食住のような肉体的欲望を満足させるだけではなく 読書や娯楽など歴史的、精神的要素を含んでいるというところ。また 労働日のところ、労働日の延長（絶対的剰余価値の生産）には限界があり それは、肉体的だけではなく精神的、社会的な欲望を満足させるため の時間を必要とする。 この両者に使われているのがmoralishという言葉です。 ▲このページのTOPへ |
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コラム.7.価格競争と非価格競争 |
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| 価格競争(price competition)は、コストの引き下げ競争であり結局は同一品質、同一商品であれば、 安い方が購買者（消費者）は購入します。資本論第一部では商品が売れるか売れないかは”命がけ の飛躍である”と述べているように、非常に難しいといいつつも、それは単純流通のことであるから ここでは商品は正常な形で売れるということが前提であった。商品流通にまつわる副次 的な問題、流通費、流通時間などは資本論第二部の「資本の流通過程」で述べられております。 より安く売るためには、①生産力を拡大する②原料を買い叩く③賃金を切り下げる などの方法があると 思われます。しかし、ここでは①の自由競争時代の生産力の引き上げ競争により、抜けがけ的な新鋭機械の導入、 採用による特別利潤（特別剰余価値）が得られる。これは個別資本においてでであり、一時的経過的なものでしかなく、 相対的剰余価値の生産になり生活必需品部門あるいは、生活必需品を生産する生産手段を生産する部門での、 新鋭機械の普及による生産力の発展が行われる。 このことによる生活必需品の減価は「労働力の価値」の低下をもたらし、相対的剰余価値の生産をもたらす。 その他の部門は「奢侈品部門」「軍需品部門」でしかない。特別剰余価値が一般的に普及したものが相対的 剰余価値です。 特別剰余価値は個別資本によるものであるが、相対的剰余価値は総資本によるものであり、一般的剰余価値率が上昇 することを意味します。 この特別剰余価値と相対的剰余価値の区別は同じようで異なるため、、その同一性と区別性は別項にて論じたいと思います。 非価格競争（non- price competition）の方は宣伝、広告、月賦販売などのことです。マルクスの時代 には余り盛んではなかったが、現代資本主義では大きな比重を占めるようになりました。 月賦販売といっても、ローンなどでは、高い金利をとられることもありますが、特別な場合は例外として やはり、消費者が買いやすいといえます。宣伝、広告は文字どうり、情報化時代の今日、ますます、企業 間の売るための競争として大きな比重を持つといえます。これらは 資本論では流通費の方には入ると思わ れます。広告、宣伝、情報も部分的には、一面では”商品”と言えます。 ちなみに、近代経済学ではヴエブレン効果 、デモンストレーション効果という非価格競争の例があります 前者はＴ.Ｖヴエヴレンが有閑階級の理論 の中で唱えた概念。通常の財（商品）の使用価値のために購買したり 消費したりするのではなく、自分の地位などの誇示、顕示や他人にみせびらかすためのもので 「衒示的消費」「見栄のための消費」ともいわれます。 後者はガルプレイスによるもので他人の消費水準や消費様式の影響を受けることによるもの。例えば、隣の人 がテレビ、パソコンを買ったからうちでも買う というようなことで、依存効果ともいわれる。 いずれにしても、消費者の心理的欲望（効用）などを主体と考えるもので、価格そのものの概念がマルクス経済学 とは異なっており、ここでは詳述いたしません。 この続きのページへ→ ▲このページのTOPへ |