私の研究

さて、資本論の概略からはじめよう。通常の解説本に書いてあることはここでは述べない。第一部では、マルクスの引用文として、ギリシャ神話、イソップ物語、聖書などがみられる。もちろん、ヘーゲルの弟子であることを認めているマルクスとしてはヘーゲル、弁証法ひいては、ヘーゲル論理学的思考方法や叙述の方法も見られる。また、副題として経済学批判と記されているように、古典派のスミス、リカードウなどの批判的摂取もなされている。 経済学批判二巻、三巻は、マルクスの死後、膨大な残された草稿をもとに、エンゲルスがまとめたもので、完璧なものではない。第四部といわれる剰余価値学説史も、エンゲルスの死後カウツキーのまとめたものである。

第1巻は全体は、マルクスの書いたものであるし、また第二部、第三部に比べ、重要度が

増しているし、ここを読まずして、いきなり二巻、三巻へはいっていくとすれば、一体

なにについて述べているのかがわからなくなる。

しかし、だからと言って、二巻、三巻まであらましでも読んでおかなくては、資本論 を読んだことにはならないであろう。一巻では労働価値説が述べられて、資本主義の流通面からは入ってゆくが、主として資本主義の生産過程つまり深部における、商品の分析から貨幣そして資本の分析へと入ってゆく。商品→貨幣→資本というように転化は上向してゆく。商品の中で、選ばれたものが金＝貨幣になり、労働力の商品化をつうじて、剰余価値が生まれ、それが資本となってゆく。

剰余価値の二面性から、絶対的剰余価値の生産と相対的剰余価値の生産へと移行してゆく。協業→分業→マニュファクチュア→産業革命による機械制大工業 の発展に伴う過度労働、長時間労働が述べられている。

資本の生産は、再生産をともなっておこなわれる。技術革新（innovation）による生産

の絶えざる増大。そのことによって、蓄積ということから、資本の集中、集積まで述べられている。もともとなにによって蓄積がはじまったのかということから、牧羊囲い込み運動など資本の原始的蓄積又は、資本の本源的蓄積というところで、第一部は終わっている。

第二巻では、一部における生産したものが、滞りなく流通して行くと言うことが前提であったのですが、売りとか買い（つまり流通）には流通費、流通時間、流通期間など、正常な流通を妨げるものがある。また、循環、回転などが分析されている。また、流通のための｢保管費｣、「運輸費」などが検討される。 また、社会的な総資本全体がどのように、流通と再生産が行われてゆくかと言う問題。単純再生産と拡大再生産にまで研究の対象が拡がって来る。消費手段と生産手段との二部門

による流通部面での個別資本同士のからみあいが単純再生産、拡大再生産ごとに分析される。

1巻、2巻は価値タームにたいして、3巻になると生産価格タームに転換する。つまり日常

意識でみられる、表面に現象する諸形態が分析される。
今までの1巻、2巻での次元は、価値の次元であって、それはいわば資本主義社会の深部

を探索してみたところであるが、第3巻では利潤とか費用価格の次元、すなわち日常意識

の利潤とか、商業資本、商業利潤とか、信用制度とか利子生み資本、地代、土地所有の問題へと次元を変えて述べられる。総過程の諸姿容である。

このことは、1巻と3巻とでは矛盾があるとか、総価値と総生産価格は一致しないといういわゆる転形問題として後年、ベームバベルグなどによって、また一部のマルクス経済学者やJ.・ロビンソンなどの近代経済学者によって批判されているところです。しかし、 以上は概略とは言えないかもしれないが、スペースの関係で、思いつくまま述べたわけです。

2016. .9.14

　　　　　　　　　　　　　�A商品と価値

まず、資本主義のもっとも単純な原基形態、要素形態である商品の分析から始める。

商品には価格がある。しかし、このことは別としても、物というものには空気、土地、木鳥、水など、労働生産物でないものと、労働生産物であるスーパー、デパート、店などで見られる価格のあるものである食料品、文房具品、家具用品等々価格のあるものはすべて商品であるといえる。ただ、物がすべて商品ではないし、また自己消費のためのものは商品であるとは言えない。すなわち、家庭菜園でトマトやほかの野菜を作ったとしてもそれらは、商品ではない。それららは売るためのものではなく、自己消費するためのものであるからです。また、自然のままの空気、水、処女地も商品ではない。

　商品にはなんらかの、他人のための有用性、＝役に立つことがなくてはならない。それを使用価値という。他人のための使用価値である。

使用価値があれば商品と言える。例え、労働の手が加わった労働生産物でなくても、例えば、冠婚葬祭業、観光のためのツアーのパックなど＝もちろんこれらのサービス業には人

の手が加わったとしても、工場などを通した労働とは別の労働が加わってはいる。

しかし、家電、自動車産業などの製造業（第二次産業）とは明らかに違う。第三次産業

は情報、医師、弁護士、バー、キャバレー、風俗産業等々の仕事等々。

　しかし、この問題は、サービス労働が価値を生むか、どうかまたはサービス、商業、交通労働、ソフトウエアなどが、商品であるのかどうかという疑問、問題がある。

論争の問題にまでいたるほど、今日の第三次産業の肥大化に伴い、かつては論争になっていたこともあるが、ここでは割愛したい。もちろん、サービスなど眼に見えないものも商品であり、価値も剰余価値を生むという論者も少なからずいる。それへの批判もある。

　次に他人のための使用価値ということになると、そのためには価格とか貨幣のことを度外視すれば、物々交換ということになる。そうすると、使用価値の背後に、交換価値を想定しなくてはならなくなる。また、自然のままの処女地や空気、水なども商品ではない。ここでは良心、名誉、貞操なども価格をもって売買されたとしても労働生産物ではないとみられる。結論は商品には使用価値と交換価値が含まれていることが明らかになる。 マルクスの資本論の場合、製造過程（生産過程）で人間労働が加えられて、できあがる商品を想定している。

細かい部分は割愛せざるをえない。しかし、マルクスが自負している「商品に表される

労働の二重性」について述べておかなければならない。これは古典派経済学にもない。商品が価値と使用価値の二要因をもっているように、

　具体的有用労働　と　抽象的人間労働　である。　労働に二つあるということではなく、使用価値の面から労働を見た場合、裁縫労働、靴を作る労働、道具や機械を作る労働などさまざま労働がある。それらは、様々な使用価値を持った商品を作り出す。

次にマルクスがやったのは、そうした使用価値一般を捨象、度外視するということである。

捨象という意味は、英語ではabstract ,ドイツ語ではabstracthieren ..。意味は抽象化するると外国語＝特に英語、ドイツ語では日本語に翻訳というか、意味を探ってゆくと、日本語では全然異なる意味のことばになることもあるということになる。

初期の資本論翻訳の河上肇さんは、“捨象的人間労働”と訳されているようです。

　従って、具体的有用労働と抽象的人間労働と二つあるわけでではなく、具体的有用労働の使用価値を捨象すれば、そこに抽象的人間労働がのこるであろうということである。

両者は裏腹の関係にあるということです。
従って、価値というのは抽象的人間労働の凝結物ということになります。

 まだ、この段階では、労働とか労働力もでてこないし、

資本論にでてくる　社会的必要労時間、とか単純労働、複雑労働については別の項目にて

説明します。

次は

　　　価値形態論と交換過程論であり、その次に商品の物神性について説明します。

。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2016.9.16